その瞬間を残す大切な仕事なんだ...

乳癌の手術をします。慣れ親しんだ体の一部が無くなる前に、元気な姿を残したいと思いますが、撮って頂けますでしょうか?」とメールをいただきました。


最近はHPを見られて問い合わせいただくことが増えていたのですが、短い文章から私にメールをする事がとても思い切ってされたのだという気持ちが伝わりました。

そして、このメールを見た瞬間ハッとしました。

昨年、「48人の女性プロフォトグラファー写真展」で女性のセミヌードを出展しました。


セクハラが問題になっている昨今アートや美術の世界でもヌードは敬遠されがちになりでもそれは別問題ではないか? と私個人的は感じていてあえてヌードにしました。
 「 私という存在の中で身体はほんの一部に過ぎない」というサブテーマです。

でもその一部がもし失われるとしたら・・・・想像すらしませんでした。 

もちろん、撮影します!とお返事しましたがとても悩みました。
貴重な二度と戻れない一瞬を請け負う事になるのです。

どう向き合えばいいのか?どんなイメージ、ライティングで撮影すればいいのか?

メールいただいてから撮影まで仕事をしながらも1週間ほど悶々としました。

ヘアメイクのMさんにもご協力いただきました。 Mさんも是非させてください!と仕事の有るスケジュールを調整してくれました。

ギャラもいただいての撮影です。

撮影本番日ご本人に初めてお会いして撮影前に色々お話を伺いました。

 健康診断で疑いがあり検査に言った先の先生が見つけることができず半年が過ぎ、そしてリンパまでの摘出手術になってしまったこと。

後悔と不安で数ヶ月過ごし自分の気持ちを前に進める為に写真に残そうと思い、ネットで私を見つけてくれたことなど...

私は商業写真が主で個人様の撮影についてはHPには書いていないので問い合わせするのに迷われたと思います。

女性は誰もが乳がんになる可能性はあります。それも高い確率で。

でも実際、当事者にならないかぎりこの苦しみは理解できない。
数週間後には身体の一部を無くす、生きる為の選択。


ヌード撮影はとても難しいです。
裸である事が重要ではなく裸であってもその人が表現できるか?
美しく写るか? イヤラシくならないか?

でもレンズの前に立たれたときにそんな心配は一切吹き飛びました。 
ここに来られるまでの覚悟で凛としたオーラーがいっぱいでした。
それにとても透明感のある方でした。

撮影中は女性ばかりでワイワイと楽しく撮影をしました。

これはフォトグラファーだとわかると思いますが、レンズを通すと集中して観るので人の感情や気持ちの揺れも感じたりします。そして気持ちが入り込むので撮影後は自身も影響されます。

哀しみも覚悟も望みもどちらも感じました。


 写真はその瞬間を残す事ですがハッピーな時だけ必要ではなく、そうでない時も必要とする人がいて心の機微を感じ取り気持ちに寄り添って、その人のその瞬間を残すという事だと気付かせていただきました。

普段の商業撮影とは全くちがうスタンスです。

撮影したデータは誰に見せる訳でもなく自分でも見直せるかはわからないと話されました。

それでも撮影しておきたかったという気持ちがとても心に刺さりました。

撮影後 「病気の事を忘れてレンズの前に立つ事ができました。心に残る素敵な1日でした。やっと前に向けそうです。」とメールをいただきました。


 病名を言われてから1秒たりも頭から離れなかったと思います。

ヘアメイクをしてもらい、スタジオで撮影という非日常な体験でその間少しの時間でも忘れることが出来たのであれば本当に良かったと思います。


無事手術を終えて、また元気に写真を見て撮影を思い出し、ご家族に笑いながら撮影時のエピソードを語ってもらいたいです。

撮影を依頼する人は全く知らないフォトグラファーに自分のすべてをさらけ出して(個人的な事も)撮影してもらうという事はとても心配な事だと思います。


なので誠実に信頼していただけるように(撮影現場でも)努めないといけないと思います。

人生の1ページに立ち会って関わるのですから。

*知り合いから、30代に両胸とリンパを全摘出された方が85歳の
今も元気にされていると聞きました。私の母も癌サバイバーですが応援しています!!

(そして私達に、セカンドオピニオンは大きな病院で詳細な検査をしてもらってください。乳癌は、自分で触れれる唯一の癌だそうです。 2年に1回ではなく年齢によっては毎年の検査をしてください。とアドバイスしてくださいました。女性の皆様、気になったら是非検診をしてください。私も忙しいとつい検査は億劫
でしたが行こうと思います。)
女性写真
photo/kunio kiyomura
BOSSの写真お借りしました!


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